大判例

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東京高等裁判所 昭和53年(行ケ)195号 判決

審決を取り消すべき事由の有無について検討する。

(一) 本件商標および引用商標のそれぞれの構成、指定商品、登録出願日、登録日についての審決の認定は原告の争わないところである。

(二)1 右争いのない本件商標の構成と引用商標の構成よりすれば、本件商標からは「デポタミン」の称呼が、引用商標からは「デポナミン」の称呼がそれぞれ生ずることは審決認定のとおりであり、この点に関する審決の認定理由は当裁判所が正当として是認できるものである。

原告は、本件商標および引用商標はいずれも倉庫等の意味を有する「DEPOT」および化学用語アミンを表わす「AMIN」を結合した造語商標であるから、その意味から、本件商標は「DEPOT」の部分の「デポ」および「AMIN」の部分(「DEPOT」の「T」と「AMIN」が称呼として結合して)の「タミン」に分けて称呼され、引用商標は「DEPOT」から考えついた造語とおもわれる「DEPON」の部分の「デポ」と「AMIN」の部分(「DEPON」の「N」と「AMIN」が称呼として結合して)の「ナミン」に分けて称呼されると主張する。

しかしながら、本件商標および引用商標が「DEPOT」と「AMIN」の結合した造語であるかどうかはさておき、かりにそうだとしても本件商標の一般取引者および需要者が右造語をそのように理解するとは考えられず、まして両商標は冗長でもないから、これを原告主張のように二つの部分に分けて称呼するとは認めがたいところである。

2 そうすると、本件商標および引用商標はそれぞれ「デポタミン」、「デポナミン」と一連に且つ一息に発音されるものとして、両商標の称呼上の類否が判断さるべきことになるが、両商標とも五音構成で語頭の「デポ」および後半の「ミン」を共通にし、僅かに中間の「タ」と「ナ」において相違するに過ぎず、しかも、この「タ」と「ナ」は母音「ア」を共通にする音であり、中間音として比較的印象され難いものであるから、これらを全体として称呼するときはその語韻、語調極めて相紛らわしいとした審決の判断は、当裁判所も正当として是認できる。

原告は、「タ」と「ナ」は中間音というより両商標の後半部「タミン」と「ナミン」の語頭の音というべきであると主張するが、前記のとおり両商標はそれぞれ「デポタミン」、「デポナミン」と一連且つ一息に称呼されるものであるから、その主張の前提が失当である。また、「タ」と「ナ」は音質上大差があると主張するが、いずれも母音「ア」を共通にする音であることは前記のとおりであり、しかも「タ」の「t」は無声、「ナ」の「n」は有声という差異はあるにせよいずれも歯茎音であるからとうてい大差があるとはいえない。

3 したがつて、本件商標と引用商標とは称呼において類似するとした審決の判断に誤りはない。

なお、原告は、語尾に「タミン」及び「ナミン」の称呼を有し、語頭には同一あるいは類似の称呼を有する商標が登録を許された事例が数多く存在するとして甲第二号証の一ないし六の各一、二を提出しているが、本件商標と引用商標の前記類否判断の当否を左右するに足りない。

(三) ところで、原告は、被告が引用商標を使用していないことを理由として、本件商標の登録無効は権利濫用であると主張する。

しかしながら、そもそも引用商標を使用しないまま(それを理由とする商標登録取消審判の請求がなされているかどうかを問わない。)、これを引いて他の商標の登録無効請求をしたからといつて、商標につき基本的にいわゆる登録主義をとるわが国の制度下で、これを権利濫用といえないことは多言を要しない。

(四) そうすると、審決を取り消すべき事由はない。

よつて、原告の本訴請求を棄却する。

〔編註〕本件に関する商標は左のとおりである。

別紙(一)

<省略>

別紙(二)

<省略>

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